課税第一部に置かれている審理課の業務内容は、組織規則によれば「内国税の賦課に関する法令の適用に関すること」を所掌すると記されています。何をしているか分かりにくいですが、実際には納税者にとって非常に重要な文書回答の事務をおこなっています。これには事前照会に対する文書回答手続き、そして、同業者団体等からの照会に対する文書回答手続きがあり、国税庁では以下のように説明しています。
[文書回答制度]
全国の国税局では納税者サ一ビスの一環として、個別の取引などにかかる税務上の取扱いについての照会に対する回答を文書により行うとともに、同様の取引などを行う他の納税者の予測可能性を高めるために、その照会および回答の内容を国税庁ホームページにて公表しています。また、同業者団体などからの照会(その構成員が行う取引などにかかる税務上の取扱いについての照会に限る)についても、上記と同様に文書による回答を行うとともに、その照会および回答の内容を国税庁ホームページにて公表しています。
しかし、例えば社長であるあなたがこれから予定している一定の取引について事前に当局に文書回答を求め、有利な回答が得られたとします。この際に経理処理をすれば、必ずしもその後の税務調査などですべてそのまま認められるわけではありません。照会する側が照会したい事柄をすべて当局に説明することができ、回答する当局がそのすべてを理解した上で下した判断であれば後に問題となりませんが、両者の一方、または双方ともに説明能力、理解能力に欠けるところがある場合には正しい判断がくだされず、調査で否認されることにもなりかねません。現実にそういう例はいくつもあるため、国税当局もその点に対して文書回答を説明したホームページ上で次のような防御線を張っています。
「わが国は申告納税制度を採用しており、申告納税は納税者のみなさまが自主的に行なっていただくものです。このような申告納税制度のもとにおいて、文書回答は、納税者サ一ビスの一環として、他の納税者の皆様に予測可能性を与え、適正な申告・納税をしていただくための一助となることを目的として実施しているものです。文書回答は、照会に示された事実関係に基づき、その時点の法令に則して、その範囲内での国税当局の判断を示すものであり、照会者の申告内容などを拘束するものではありません。また、文書回答は、あくまで照会者から示された事実関係を前提としたものですから、その示された事実関係が実際の取引などと異なっていたり、新たな事実が生じたような場合には、回答内容と異なる課税関係が生じることがあります。したがって、文書回答どおりの申告を行なったとしても、たとえば、法令の改正などがあったり、調査による事実確認の結果、実際の事実が照会にかかる事実と異なることなどが判明したような場合には、国税当局として別の判断を行い、課税処分等が行われる可能性があります。」
このように最後の責任は社長自身が取るしかなく、自己責任です。このような問題は、文書回答を行う部署と調査を実施する部署が異なるために生まれると考えられます。部署が異なれば当然に担当者も異なり、それによって事実関係のとらえ方や解釈の仕方などが異なってきます。極端に言うと、示された事実関係をもとに一定の回答をすればよいだけの担当者と、示された事実関係やその裏に隠れている別の真実を見極めようとする調査担当者の立場によって見方が異なることが両者に齟齬をきたすこととなり、結果的に別の判断が取られて課税処分が行われてしまいます。そこで大事になるのが社長の胸の内にある真実であり、社長の頭の中に入っているとおりの経理処理をすることが結局は最善最良の結果を会社にもたらします。これが税務調査の正しく上手な受け方であり、また、会社や課税当局、税理士、関係するすべての人々が勉強して知識と経験を深め、事実関係を的確に分析する能力や正しい判断をする能力、わかりやすく説明する能力を磨く必要があります。