黄金株を発行する場合、又は既存の株式を黄金株に変更する場合に留意すべきことを教えてください。

黄金株を発行する場合、又は既存の株式を黄金株に変更する場合には、取得条項を付けておくことをお勧めします。

議決権の大部分(90%)を所有していた、ある会社のオーナーが、自分に万一のことがあったら相続税の負担が高額になるとの考えから、株価が大幅に下がったタイミングで、所有する株式の大部分の後継者への贈与を行いました。ただ、オーナーには、自分の目が黒いうちは会社経営の実権を握りたいという意向もあって、その贈与と引き換えに、オーナーの株式のうちの1株を「拒否権付株式(黄金株)」に変更しました。
歳月を経て、オーナーに相続が発生しました。後継者は、生前にオーナーから多額の株式を贈与されていましたので、遺留分の関係からオーナーの相続財産を一切相続しませんでした。黄金株の存在については、忘れてしまっていました。
遺産分割が終わり、相続税の申告も終了した頃に、オーナーの相続財産の中に黄金株が含まれていることを、後継者は思い出しました。したがって、後継者は、黄金株を承継した相続人に、その株式を会社に売り渡すことを、すぐさま要求しました。
その相続人は、黄金株を売り渡すことには簡単に同意しましたが、黄金株の買取価額については、普通株式の評価額に相当のプレミアムを付けた価額(普通株式の10倍の価額)でなければ譲渡は行わないと主張しました。
後継者は、この件を顧問の先生等に相談しましたが、今後の会社経営のことも考えて、黄金株を承継した相続人の主張する価額でやむなく買取ることにしました。
後継者のちょっとした不注意によって、会社としては、多額のキャッシュアウトを余儀なくされてしまったといわざるを得ません。
その株式を有する人の承認がなければ株主総会決議が成立しないという大きな力を持つ株式が、黄金株です。このような黄金株が会社の経営に関与していない人の手に渡ってしまうことにより、経営陣はスムーズに会社経営を行うことが不可能となってしまいます。
ゆえに、このように大きな力を持つ黄金株を発行する場合、又は既存の株式を黄金株に変更する場合には、取得条項を付けておくことをお勧めします。