自社株(非上場)を物納することにより、相続税の納税資金対策になりますか?

相続税の物納は、延納によっても金銭で納付できない部分の税額に限り、認められます。なお、株式は、物納に充当できる国債や不動産等がない場合に限り、物納に充当することが可能です。

1.物納の活用
 平成18年の税制改正で物納財産が明確化されたことから、非上場株式の物納がしやすくなったといえます。

2.物納の要件(金銭納付困難事由)
 原則として、相続税は金銭で一括して納付することが必要です。一括納付ができない部分に関しては、最長20年の分割払いによって延納することを検討しなければなりません。延納によっても金銭で納付できない部分の税額に限って、物納が認められることになります。
それゆえ、もし相続人に収入があるために物納による納税が不可能であるなら、遺言によって、その相続人の次の後継者(被相続人の孫)に相続させることも考えてみるといいでしょう。孫なら通常、まだ若く、ほとんど預貯金がなく、延納ができるほど収入もないことが多いために、物納を認めてもらいやすいといえます。
 物納条件が整っているならば、どの不動産を物納に充当するかの選択については、納税者が選ぶことができます。ただし、未分割の土地、争っている土地、抵当権付不動産を物納することはできないことに注意するべきです。

3.物納財産の順位
 物納できる財産と、物納の順序については、次の通りです。
第一順位:1 国債、地方債、不動産、船舶
     2 1のうち劣後財産
第二順位:3 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
     4 3のうち劣後財産
第三順位:5 動産
 自社株は第二順位に該当し、物納に充てる国債や不動産等がない場合に限り、自社株を物納に充てることができます。

4.物納できない非上場株式
 物納することができない非上場株式は、譲渡に関して証券取引法その他の法令の規定により一定の手続きが定められている株式で、その手続きが取られていないもの・譲渡制限株式・質権その他の担保権の目的となっている株式・権利の帰属について争いがある株式・2以上の人の共有となっている株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます)です。

5.物納後の処分
 物納された自社株は、原則として一般競争入札により処分されることになります。ただし、「随意契約適格者」(物納申請者・その発行会社・主要株主・役員等)が一定の書類を提出し、原則として収納日から1年以内に買い戻せば、好ましくない人に株式が渡るのを防ぐことができます。

6.物納と譲渡税
 物納により移転した財産の収納価額は、相続税評価額です。その移転の際に譲渡税はかからないことになっていることから、含み益のある財産を物納しても課税されません。
 しかしながら、超過物納があることから過誤納金として還付される金額があるならば、その部分に譲渡税が課されることになります。この場合には、相続開始日から3年10ヶ月以内の物納であるなら、相続税の取得費加算の特例の適用があります。