株式保有特定会社の総資産に占める株式の割合が低くなって、株式保有特定会社に該当しなくなる可能性があると考えられます。
1適格現物分配
平成22年度税制改正において、組織再編税制の一環として適格現物分配についての規定が創設されました。100%グループ内の法人間での現物分配は、適格現物分配とされました。現物分配とは、いわゆる現物配当のことで、金銭以外の資産によって行われる配当をいいます。
含み損益のある資産を現物分配した法人で譲渡損益が計上されたのは平成22年度税制改正前のことであり、改正後はその資産を帳簿価額で譲渡したものとされて譲渡損益は計上されなくなりました。そして、改正後は、現物分配を受けた法人において、その受けたことによって発生する収益は益金の額に算入されなくなりました。
2.株式保有特定会社
株式保有特定会社とは、評価会社が所有する株式等の額(相続税評価額)の総資産(相続税評価額)に占める割合が一定以上(大会社の場合は25%以上、中会社・小会社の場合は50%以上)の会社のことです。この「株式等」には、主に次のものが含まれます。
・金融商品取引業者が保有する商品としての株式
・外国株式
・法人に対する出資
・株式制のゴルフ会員権
株式保有特定会社の株式は、純資産価額を基準に評価するのが原則ですから、類似業種比準価額で評価するのと比較して、株価が高くなる傾向があります。
そして、納税者の選択により、「S1+S2」方式で評価することもできます。「S1+S2」方式とは、株式保有特定会社の株式評価を株式等以外の評価(S1)と株式等の評価(S2)に分けて行う方式です。S1は一般の評価会社に準じて評価をし、S2は純資産価額方式により評価をします。
3.株式保有特定会社が100%グループ内法人の不動産を現物分配により取得した場合の影響
A社はB社(不動産賃貸業)の株式を100%所有していて、A社とB社は100%グループ内法人です。B社は時価の高い不動産を多く保有していますので、B社の株価は高くなっています。それゆえ、A社の総資産に占める株式の割合が高く、A社は株式保有特定会社に該当します。
このようなケースでは、株式保有特定会社に該当することから、原則として純資産価額を基準に株式の評価をしますので、類似業種比準価額で評価をするのと比べて、株価が高くなる傾向が見られます。
業務拡大に伴い新規事業所を必要としているA社が、B社の保有する不動産を現物分配により取得したとすると、このとき、B社において現物分配を行った不動産にかかる含み損益への課税は行われません。
この取引の結果としては、A社の総資産に占める株式の割合が低くなって、A社は株式保有特定会社に該当しなくなる可能性があると考えられます。