相続によって取得した自社株の会社への譲渡により、自社株をお金に換え、納税資金とすることが可能です。なお、一定の要件を満たすと、みなし配当課税の適用はなく、譲渡所得として課税されることになります。
1.金庫株の活用
平成13年の商法改正によって、会社は自己株式を自由に取得・保有することが可能となりました。この自己株式の保有・取得の自由化は、金庫株と呼ばれます。
相続により取得した非上場株式(自社株)を発行会社へ譲渡することで、換金が困難な自社株をお金に換え、納税資金とすることができます。
2.自己株式買取りの手続き
相続で取得した非上場株式の会社への譲渡に際しては、その会社は次の会社法上の手続きを行います。
(1)株主総会(臨時でも可)の特別決議、つまり総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ、その議決権の2/3以上に該当する多数をもって行われる決議が必要となります。
(2)取締役会において、取得する株式数・交付する金銭等の内容と総額・株式を取得することができる期間・譲渡人となる株主を決めなければなりません。
3.みなし配当の不適用
株式をその発行会社に譲渡すると、一般的には、資本等の金額を超える部分の対価については、「みなし配当」とされ、みなし配当課税(配当控除後の最高税率約44%)がなされます。
しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得し、納付する相続税があること・相続税の申告期限後3年以内に譲渡することという要件を満たす人が、相続で取得した自社株を発行会社へ譲渡すると、みなし配当課税ではなく、全額について譲渡所得課税(20%)となります。
高所得であるために税率が高くなる人は、この金庫株の特例の適用によって譲渡所得として課税された方が税務上、有利になります。
4.相続税の取得費加算の特例
株式の相続時に、納めた相続税があって、かつ、相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、その譲渡した相続人には、上記のような金庫株の特例のほか、相続税の取得費加算の特例が適用されます。したがって、譲渡所得の計算上控除する取得費に、譲渡した資産に対応する相続税が加算されるため、譲渡所得が圧縮されて、譲渡に係る所得税・住民税の負担が軽減されます。