A.「持分なし」の社団医療法人が活動資金を調達するために、定款に定めることで、基金制度を用いることが認められています。この基金制度を用いている「持分なし」の社団医療法人のことを基金拠出型医療法人といいます。
1.基金拠出型医療法人と出資額限度法人の相違点
非営利性の徹底のために、第五次改正医療法が施行されてから新設できるのは「持分なし」の社団医療法人のみとされました。
こうした「持分なし」の社団医療法人が活動資金を調達できるよう、医療法施行規則第30条の37に、定款に定めるところによって基金制度を用いることが可能である旨の規定がなされました。このような基金制度を用いている「持分なし」の社団医療法人のことを基金拠出型医療法人といいます。
「持分なし」の社団医療法人に拠出された金銭その他の財産で、定款の定めるところによって、その社団法人が拠出者に返還する義務を負うもののことを、基金といいます。
そして、出資額限度法人は、平成16年の厚生労働省医政局長通知を基にした法人であり、「持分あり」の社団医療法人の類型の一つといえます。社員退社時における出資払戻請求権及び医療法人解散時における残余財産分配請求権につき、その権利が払込出資額を限度として法人財産に及ぶとすることを、定款の定めによって明白にした医療法人といえます。
2.基金拠出型医療法人を設立するための手続き
基金拠出型医療法人を設立するには、基金を引き受ける人の募集ができる旨を定款に定める以外に、基金拠出者の権利や基金の返還手続きの規定をしなければなりません。
厚生労働省のモデル定款では、基金拠出者の権利につき、「本社団は、基金の拠出者に対して、本社団と基金の拠出者との合意の定めるところに従い返還義務(金銭以外の財産については、拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務を負う)」という規定がなされています。そして、基金の返還手続きにつき、次のように規定がなされています。
・「基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければならない。」
・「本社団は、ある会計年度に係る貸借対照表上の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合においては、当該会計年度の次の会計年度の決算の決定に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、当該超過額を返還の総額の限度として基金の返還をすることができる。
(1)基金(代替基金を含む。)
(2)資本剰余金
(3)資産につき時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額」
・「基金を返還する場合には、返還をする基金に相当する金額を代替基金として計上しなければならない。」
3.基金制度の要点
基金制度については、次に掲げることがポイントとなります。
・基金は利息を付けない債権で、解散時における残余財産には含まれないこと。
・拠出者への返還額は、拠出をした当時の額が限度となること。
・基金を返還するためには、定時社員総会の決議が必要となること。
・基金の返還は、貸借対照表上の純資産額が基金の総額等を超過する場合におけるその超過額が限度
となること。
・基金の返還は、その年会計年度の次の会計年度に関する定時社員総会の日の前日までとなること。
・基金を返還する場合には、代替基金を計上すること(代替基金を取り崩すことは不可能です)。
・基金及び代替基金は、貸借対照表の純資産の部に計上すること。