Q.医療法人において医療機器を導入するに当たり、注意すべき点は何かありますか?

A.医療経営においては、医療機器の導入は重要な経営課題であるといえます。契約形態(購入、リース、レンタル)等について、情報を的確に収集し、総合的に検討する必要があります。

1.医療機器の重要性
 医療機器は絶えず進化していて、診断におけるIT化や遠隔医療等によって、医療のあり方自体が変わる可能性があります。したがって、医療機器の選択については、必須の機器のほか、将来を見据えながら、経営に合った機器の導入を検討するといいでしょう。

2.導入する医療機器
 患者さんを中心に考えて、治療や検査に不可欠な医療機器を導入します。そして、最新の医療機器に関しては、予算や、患者さんとの信頼関係、効率等も考慮した上で、導入していくといいでしょう。
 医療機器には治療用機器、検体検査機器、診察付帯機器等があり、医療機器を選択するに当たっては、構造、性能、安全性、耐久性、信頼性、処理能力、使いやすさ、ランニングコスト、コストパフォーマンス、保守点検の容易さ、アフターサービス等を判断基準とします。
 医療機器を導入する際には、どの医療機器の必要性が高いのか、実際にどの程度利用することになりそうなのかについて、使用目的に応じた調査を行うことが重要です。さらに、設備の想定稼働率を用いて個別収支計算をすることにより、導入の妥当性を考えなければなりません。

3.医療機器導入時のチェック項目
 医療機器を導入するに当たっては、その導入を検討している医療機器について次に掲げることを確認すべきであるといえます。
・日常の診察において使用頻度が多い機器であるか。
・その機器がなければ、診察に不都合が生じるか。
・その機器の使用頻度と処理能力が調和しているか。
・使用頻度にかかわらず常備すべき緊急用の機器であるか。
 また、機能が同じであれば安い医療機器を使用するといった原価意識や、専門性を有する高度医療を実施するのか、それとも装備に凝るのではなく病診連携の方針でやっていくのかという治療方針を再確認することも必要です。

4.業者選択時のチェック項目
 医療機器を導入する際には、各科別の専門的知識が必要となるほか、どの業者から購入等を行うかも重要となります。業者を選択するに当たっては、次に掲げることを確認すべきであるといえます。なお、見積りの依頼は、複数の業者に対して行うといいでしょう。余計な機器を購入しないよう留意する必要があります。
・自院にとって必要な専門機器を幅広く取り扱っているか。
・中古品、再生品、修理品の取扱いもあるか。
・価格提示が適正であるか。
・購入、リース、レンタル等を選択できるか。
・銀行やファイナンス会社、リース会社と提携していて、手続きの際に協力してもらえるか。
・自院に適した機器を選択して提案してくれるか。
・導入後のアフターフォロー、メンテナンスが期待できるか。

5.購入かリースかの選択
 医療機器を購入するか、リースを利用するかについては、リースのメリットとデメリットを認識した上で、そのときの状況に応じて判断しなければなりません。
 (1)メリット
・購入時には必要な多額の資金が不要であること。
 ・リース期間で均等償却し、必要経費となること。
 ・リース期間は法定耐用年数より短いこと。
 (2)デメリット
 ・購入と比較して、支払合計は割高となること。
 ・中途解約ができないこと。
 ・物件の所有権はリース会社が有しているので、リース契約終了後も物件を利用するならば、再リース又は買取りが必要となること。
 医療機器を購入するためには、多額の資金を一度に準備しなければなりません。ただし、購入後は、
定率法による減価償却をすることによって、早期に多額の経費を計上できます。そして、支払合計が
リースの場合より少ないことが、購入の最大のメリットといえます。
 リースのメリットをどれほど重視するかによって、購入とリースのどちらを選択するかが決まると
いえます。潤沢な自己資金がある場合には、購入の方が有利なことも多いので、総合的な検討を行い
ましょう。ちなみに、割賦購入の場合は、多額な資金が必要ではない上に、定率法による減価償却が
可能です。